iPhoneのバッテリーはアップルに頭の痛い問題をもたらしたことがありますが、同社は今後、積極的に充放電サイクルによるバッテリー劣化を抑える方針に舵を切りそうです。
開発者向けに配信されているiOS 13ベータ版で、バッテリーの充放電サイクル寿命を延ばす(容量の劣化を抑える)ための新機能が導入されたことが報じられています。
この「Optimized Battery Charging(最適化されたバッテリー充電)」機能は「設定」>「バッテリー」>「バッテリーの状態」内に配置されており、ユーザーが設定の有効/無効を切り替えられる仕組み。「バッテリーの劣化を防ぐため、iPhoneはあなたの日々の充電ルーチンを学習し、充電が80%を超えると次に使用するまで充電を停止します」と説明されています。
MacRumors
この解説によれば、たとえば寝ている間にiPhoneを充電する習慣がある場合、就寝している間の充電は80%までとし、残りの20%は起床して手に取った時点から充電が再開されるという動作になります。
この機能のメリットは、バッテリーの(充放電サイクルによる)劣化、つまり最大容量の減少などを抑える効果が期待できること。
実は充電式バッテリーにおいて満充電状態は、状況によっては高温を発してバッテリーにダメージを与える可能性があるなど、充放電サイクルという観点からは望ましくありません。このため、満充電状態になっている時間はなるべく短縮したいのです。
この機能は満充電を最小限に抑えることにより、バッテリーの劣化を防いで寿命を長引かせる可能性がある、というわけです。
2017年末、アップルは電池が劣化したiPhoneを意図的に低速化させていたことが発覚し、2018年末までのバッテリー交換値下げを実施。その結果、1100万台ものバッテリーを安価で交換するコストとともにiPhone買い替え需要の減速を招くなど、大きな痛手を受けていました。
iOS 11.3以降からは設定項目に「バッテリーの状態」が追加され、今年5月には英国の政府機関に対してバッテリーの寿命に影響を与える可能性のあるiOSアップデートは事前にユーザーに知らせることを約束しています。
iPhoneのバッテリー問題はアップルにとって高く付きましたが、「自ら進んでバッテリー劣化を防ぐ」姿勢を示すことでイメージを回復させ、攻勢に打って出るしたたかな戦略かもしれません。